メインコンテンツへスキップ
特急ひたちで行く1,300年の歴史ある温泉――いわき湯本温泉(福島県いわき市)

特急ひたちで行く1,300年の歴史ある温泉――いわき湯本温泉(福島県いわき市)

·1012 文字·3 分

特急ひたちが運ぶ、硫黄香る「三函の湯」
#

福島県いわき市にある、いわき湯本温泉(いわきゆもとおんせん)。品川や上野から乗り換えなしでアクセスできる特急「ひたち」に乗り、その車窓を楽しみながら辿り着くいわき湯本駅は、ホームに降り立った瞬間から独特の硫黄の香りに包まれる。日本三函の湯の一つに数えられるこの古湯に、私は何度も宿泊で訪れている。

これまで、童謡詩人ゆかりの庭園露天風呂が美しい『雨情の宿 新つた』に一度、そして元禄八年創業の老舗であり、現在は「原子力災害考証館」を併設して地域の記憶を繋いでいる『古滝屋』には、二度の宿泊を重ねた。

高台から街を見守る、式内社「温泉神社」
#

温泉神社

温泉街の喧騒から少し離れ、階段を昇り詰めると『温泉神社』が鎮座している。 1,300年以上の歴史を持ち、延喜式神名帳にも名を連ねる式内社だ。この高台にある由緒正しき社殿に参拝し、そこから温泉街を見下ろすと、炭鉱の町として栄えた歴史と、湯と共に歩んできた街の重みが静かに伝わってくる。いわき湯本の旅において、この神社への参拝は欠かせない行程である。

温泉神社の境内には、温泉が湧いていた。このような風情も、温泉地に古くから鎮座する神社の醍醐味だろう。

境内の温泉

共同浴場『さはこの湯』に漂う、生活と衛生の課題
#

さはこの湯

しかし、街のシンボルである共同浴場『さはこの湯』を訪れると、観光客としては少々戸惑う現実に直面することになる。

浴室に入って目につくのは、並べられた無数のシャンプーやリンスだ。地元客による「取り置き」が常態化しており、中には身体を洗った後、私物を置いたまま湯船に浸かりに行く人々も多々見受けられる。洗い場が事実上「占有」されており、一見の観光客にとっては、空いている場所を使って良いのか判断がつかず、不便を感じざるを得ない。

さらに、この『さはこの湯』を巡っては深刻な事態も起きている。2025年10月、浴槽水から基準値を超えるレジオネラ菌が検出され、営業停止処分を受けてしまっている。

総括:歴史の重みと、生々しい日常の狭間で
#

素晴らしい宿のホスピタリティと、温泉神社の荘厳な静寂。その一方で、共同浴場で見られた「生活の場」としての強すぎる占有意識と、露呈した衛生管理の不備。

いわき湯本は、1,300年続く歴史の誇りと、現代の公衆浴場が抱える生々しい課題が同居している。それらすべてを肌で感じることこそが、この街を何度も訪れ、見つめ続けてきた私の旅の記録である。

関連記事