期待を裏切る「本物」との出会い #
茨城県常総市。のどかな風景の中を自家用車で走り、何度目かになる「きぬの湯」へと向かう。外観はいわゆる標準的な日帰り温泉施設であり、一見するとどこにでもある憩いの場のようにも見える。館内に入れば、広々とした食事処や休み処が完備され、日常の延長線上にある安心感を与えてくれる場所だ。
しかし、この施設には、そんな「標準的」という言葉では片付けられない、圧倒的なこだわりが隠されている。
圧巻の源泉掛け流しと多彩な湯遊び #
浴室の扉を開けると、そこには湯好きの心を躍らせる光景が広がっている。内湯から露天にかけて、陶器や桶を用いた趣のある浴槽が点在し、身体に刺激を与える電気風呂や、心身を解放する寝湯、そしてサウナと、日帰り施設に求めるラインナップはすべて揃っている。特筆すべきは、リハビリテーションを彷彿とさせる珍しい「歩行湯」の存在だ。機能的な設備が整う一方で、この施設の真骨頂は「質」にある。
温泉地というわけではないこの地で、なんと浴槽のほとんどが「源泉掛け流し」という贅沢な仕様なのだ。ナトリウム塩化物泉の湯は、私好みのしっかりとした重厚感があり、肌を包み込むたびに身体の芯から熱が沁み渡る。
温泉教授・松田忠徳氏の評価 #
浴室の壁に目をやると、温泉評論家としてその名を知られる松田忠徳氏のコメントが掲げられている。名立たる温泉地を巡り歩いた権威が、この地方の日帰り施設で足を止め、その湯の力を認めているのだ。
「温泉地ではないから」という妥協は一切ない。その事実は、松田氏の言葉以上に、湯から上がった後もいつまでも消えない身体の火照りが証明している。茨城の地にこれほどまでの本格派が潜んでいること。それを知っているという悦びが、再訪の足をさらに軽くさせる。