メインコンテンツへスキップ
湯の山温泉 鹿の湯ホテル レポート|泉質よりも時間を味わう。混雑を避けて癒やされたい人へ

湯の山温泉 鹿の湯ホテル レポート|泉質よりも時間を味わう。混雑を避けて癒やされたい人へ

·2151 文字·5 分

三重県菰野町にある湯の山温泉(ゆのやまおんせん)を訪問し、『鹿の湯ホテル』を日帰り利用した。

鹿の湯ホテルは、強烈な泉質や広大な露天風呂で勝負するタイプの宿ではない。アルカリ性単純泉の穏やかな湯と、落ち着いた館内空間、そして地域の歴史を大切にする姿勢が魅力の、静かな老舗旅館である。

実際に土曜正午に訪れたが、浴場は終始落ち着いており、30分ほどほぼ貸切状態で入浴できた。湯は無色透明でクセがなく、寝湯で横たわりながらゆったりと過ごす時間は格別だった。

この記事では、

  • 日帰り利用の雰囲気
  • 泉質の率直な感想
  • 近隣施設との違い
  • 館内の文化的な魅力

を実体験ベースで詳しく紹介する。

施設情報
#

項目 内容
施設名 湯の山温泉 鹿の湯ホテル
所在地 三重県三重郡菰野町菰野8520-1
泉質 アルカリ性単純泉
営業時間 11:00~14:30 (日帰り利用)
料金 1,000円(日帰り利用)
公式サイト http://www.sikanoyu.co.jp/

浴場と泉質の特徴
#

泉質と湯の個性
#

暖簾

鹿の湯ホテルの泉質はアルカリ性単純泉で、色は無色透明である。これは湯の山温泉の他の施設と同様である。近隣の『湯の山温泉 グリーンホテル』と比べて、源泉の違いを楽しんだり、飲泉を楽しんだりすることは出来ない。また、グリーンホテルの自家源泉はかなりトロみがあったが、鹿の湯ホテルはアルカリ性単純泉ながら、トロみは感じられなかった。率直に言うと強い個性がある訳ではないが、逆に言えば湯当たりなどもない、万人が癒される温泉である。

浴場の規模と滞在時の雰囲気
#

浴室の広さ自体は決して大きくはないが、これは欠点ではない。むしろ、多人数を収容することよりも、静寂の中で湯を愉しむことを重視する老舗高級旅館らしい適切な規模感といえる。体感としては、4〜5人程度で浸かるのがベストである。

なお、私が訪問したのは土曜日の12時頃だが、先に入浴していたご老人1人が去った後は、30分程入浴していても他の客は来ず、温泉を一人で満喫することが出来た。

浴室で特筆すべきは、温泉旅館としては珍しい寝湯の存在だ。無色透明の穏やかな湯に身を預け、横たわって目を閉じれば、深い安息が訪れる。寝湯は窓際にあるため、景色を見ながらうたた寝するのも良いだろう。

浴場には内湯に加えて露天風呂も備えられている。規模は大きくないが、外気に触れながら入る湯はやはり格別で、湯の山の静かな山あいの空気を感じることができる。派手さはないが、落ち着いた老舗旅館らしい露天である。

日帰り料金とコストパフォーマンス
#

鹿の湯ホテルの日帰り入浴料金は1,000円である。私は割引を利用し600円で入浴したため、価格に対する満足度は高い。しかし、定価の1,000円となると評価はやや変わる。同じ湯の山温泉内で、『湯の山温泉 グリーンホテル』の日帰り料金(土日祝日)も1,000円なのである。

グリーンホテルは上述したように、複数源泉有り・源泉掛け流し・飲泉可能と、泉質に関する特徴が際立っている。このため、純粋に泉質を求めるならグリーンホテルを選ぶと良いだろう。ただし、グリーンホテルは日帰り利用が人気でそこそこ人がいるため、静かな高級旅館で温泉に浸かりたいならば、鹿の湯ホテルで過ごすのも有りだと思う。

館内施設
#

鹿の湯ホテルは純然たる温泉宿であり、昨今のスーパー銭湯や大規模な日帰り温泉施設に見られるような、賑やかな娯楽設備は存在しない 。しかし、品の良い調度品が旅館の品格を感じさせてくれる。

休憩所

湯上り後に館内を歩くと、見晴らしの良い休憩所に辿り着いた。大きな窓の向こうには、湯の山温泉の豊かな自然が絵画のように切り取られ、火照った身体をクールダウンさせてくれる。ソファに身を委ね、景色を眺めながら過ごす時間は、安らぎをもたらしてくれた。

ひな祭り

館内に一歩足を踏み入れると、随所に趣向を凝らした装飾が配された、上質な空間が広がっている。特に印象的だったのは、桃の節句を前に飾られた雛人形だ。

これらは単なる既製品の装飾ではない 。地域住民から借り受けたという歴史ある人形で、その由来も丁寧に記されていた 。例えば、東京から湯の山温泉へと嫁いだ女性が大切に携えてきた雛人形が、後に宿へと譲られたというエピソードなど。ひな人形の展示で、人形の数だけこの土地の記憶が刻まれている様子が窺えた。

ひな人形

SNSの映えだけを狙った新興の宿には真似できない、地域の記憶を大切にする姿勢。利益至上主義ではない、歴史ある旅館ならではの文化的な豊かさに胸を打たれる。

果実酒

また、館内には女将手作りの果実酒があった。棚に飾られた果実酒は、バナナ・メロン・アロエなど様々な種類があり充実している。私は車での訪問であり、また、日帰り利用であったため呑んではいないが、宿泊であれば間違いなく興味が惹かれて吞んでいただろう。

まとめ
#

鹿の湯ホテルは、温泉のインパクトを求める場所ではない。老舗ならではの落ち着いた空間と、地域の雛人形展示などからも、その姿勢は感じられた。

2月の冷えた身体を解きほぐしてくれたのは、湯の温もりだけでなく、雛人形が物語るこの土地の温かみだったのかもしれない。次回は日帰りではなく、この重厚な空気の中に一晩身を置いてみたいと思わせる、そんな名石のような宿であった。

関連記事